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[FT]「ソ連大穀物強盗」を彷彿させる小麦高騰

2010/8/4 0:00

2010年8月3日付 (英フィナンシャル・タイムズ紙)

 
 
ロシアなど3カ国を最悪の干ばつが襲う(ロイター)

ロシアなど3カ国を最悪の干ばつが襲う(ロイター)

 ベテランの小麦トレーダーにとって、今の相場高騰は強い既視感がある。1972年、旧ソビエト連邦が壊滅的な干ばつに見舞われ、深刻な小麦不足に陥った。ソ連政府は小麦不足を補うために国際市場に飛びつき、米国で手に入る余剰小麦をほぼ全量買い占めた。

 

3カ国を襲った最悪の干ばつ

 

 米政府は何週間も冷戦の敵国による買いに気づかなかったため、後に「大穀物強盗」と呼ばれるようになったソ連の小麦買い占めは、全世界で食料価格高騰の引き金を引いた。

 それからおよそ40年たった今、おなじみの光景が広がっている。100年以上前に統計が始まって以来最悪の干ばつがロシア、ウクライナ、カザフスタンの小麦畑を襲い、3カ国の生産見通しを悪化させているからだ。

 「大穀物強盗」当時とは異なり、これら3カ国は小麦の輸出大国となっているが、各国の生産不足は世界の小麦供給を逼迫(ひっぱく)させ、数十年前の買い占めと全く同じ影響をもたらしている。価格を高騰させているのである。

  欧州の小麦相場は、干ばつを受けて6月末から50%高騰してきたうえに、8月2日には1トン=200ユーロの大台を突破し、2年ぶりの高値をつけた。パリ 市場で取引されるロンドン国際金融先物取引所(LIFFE)小麦先物11月物は取引途中に、前日比8%高の1トン=211ユーロまで跳ね上がった。

 「市場は今、売り手不在の状況で、誰もが買いに回っている」。パリの商品ブローカー、プランテュルーでデリバティブ(金融派生商品)を手がけるファビアン・フォイヤール氏はこう話す。

 欧州の小麦相場が現在の高値を超えたのは2007~08年の食糧危機の最中だけで、その時は一時、1トン=300ユーロの史上最高値をつけた。

 

シカゴでは22カ月ぶりの高値更新

 

 シカゴでは、シカゴ商品取引所(CBOT)の小麦先物9月物が1日で7.5%近く高騰して1ブッシェル=7.11ドルをつけ、22カ月ぶりの高値を更新した。CBOTの小麦相場は7月に42%も高騰し、月間ベースで1959年以来最大の上げ幅を記録している。

  トレーダーやアナリスト、食品業界幹部は、悪天候が続いているためにロシアの小麦生産量の予想を段階的に引き下げており、さらなる相場高騰を懸念してい る。最新の暫定予想では、ロシアの小麦生産量は4500万~5000万トンとされる。これは5年ぶりの低水準であり、年間消費量4700万トンを下回る可 能性がある。

  マッコーリー・グループの農産物アナリスト、アレクサンダー・ボス氏(ロンドン在勤)は、ロシアの穀物情勢に対する市場の見方は、過去数週間で「悪化の一 途をたどっている」と言い、「黒海地方でかなりの生産減少が見込まれ、今後数週間で相場が一段と高騰する可能性がある」と指摘する。

 ロシアは過去5週間、熱波に苦しめられている。畑には、それ以上前から雨が降っていない。気象学者によれば、8月半ばまで異常な高気温が続く見通しで、一息つくことは期待できないという。

 また、多くのアナリストは、旧ソ連圏のウクライナとカザフスタンでも小麦の生産が減少すると予想している。昨年の小麦生産量は、ウクライナが2090万トン、カザフが1700万トンだった。

 それに加え、世界最大級の小麦輸出国の1つであるカナダでも、生産量が急減すると見られている。作付け時期に大雨が降った影響で、作付けできずに終わった土地が相当あるからだ。

  カナダ西部の農家を代表する専売組織カナダ小麦ボード(CWB)は先週、2010~11年度の生産予想を1850万トンに引き下げた。前年度の生産量 2880万トンと比べると36%の大幅減となる。CWB会長のアレン・オバーグ氏は、雨が悲惨な状況をもたらしたと言う。「農家は逆境に強いものだが、種 を植えることさえできないと、さすがに参る」

 

「パニック」の可能性は低く

 

  世界的な小麦の生産不足は、2007~08年の食料危機の記憶を呼び覚ます。当時は、トウモロコシやコメをはじめとした多くの農産物が史上最高値を記録 し、ハイチやバングラデシュなどで食料高騰を巡る暴動が相次いだ。また、この危機を受け、慢性的な飢えに苦しむ貧困層の数が世界で初めて10億人を突破し た。

 しかし、今の状況には際立って異なる点がある。需要サイドでは、全般的なマクロ経済状況のせいで飼料業界の需要が落ち込み、食料危機時と比べると消費の伸びが弱い。また、供給サイドでは、過去2年間の豊作のおかげで、小麦の在庫が当時よりかなり潤沢だ。

 この組み合わせは、相場が2007~08年の最高値を超えたり、1972~73年の「大穀物強盗」のようなパニックを引き起こしたりする可能性が低いことを意味している。それでも今の相場高騰は、昔の記憶を呼び覚ますには十分すぎるのである。

 

By Javier Blas

 

(翻訳協力 JBpress)

 

(c) The Financial Times Limited 2010. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.







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